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*2000年・夏、ぶらぶらと会津へ*

 福島県会津地方というとすぐに思い浮かぶのが、会津若松、喜多方、会津磐梯山など。
 でもそれは会津地方のほんの入り口。その先にある広大な会津の地、地図を眺めているうちにちょっと走ってみたくなった。

磐梯山を横に観て、喜多方から会津若松へ

* * *

 2000年の夏は本当に暑かった。7月末、週間天気予報は一週間くらい晴れっぱなし。この機をのがす手はない。さっそく出発。と言っても思いつきの会津行、のんびり焦らず行ってみよう。
 8月1日
 前夜は熱帯夜、とても眠れたものではなかった。
 朝5時に起床、その後の仕事の段取りをつけて7時過ぎ、オートバイに跨り出発。もはや汗がにじみ出るほどの気温になっていた。
 国道13号線を南下。天童、山形、米沢、ふだんよく走る片側2車線のいわゆる幹線道路なので、走っていておもしろくも何ともない。
 歳をとるごとに走り慣れた道がふえ、同時におもしろくない道もふえていく。当然のことではあるが、さびしいことだと思う。
 米沢から国道121号線に乗り、大峠を越え喜多方に向かう。
 さすがに県境付近は幾分気温が低かったが、喜多方の町中に入ると気温が一気に上がった。アスファルトとコンクリートのせいか?。蔵の町、喜多方。建ち並ぶ蔵の中は涼しいのだろうか?
 喜多方といえば今やラーメンの町。ラーメン店が多いのはもちろんだが、酒蔵の多さにもビックリする。こんな小さな町に、いったいいくつの蔵元があるのだろうか。それから意外だったのはコンビニ店の多さ。ちょっとした都会並。
 通りの両側では華やかな提灯を飾り付けたり、紅白の垂れ幕を張ったりしている。どうやら夏祭りがあるらしい。そんな中を流して走っていると町全体が楽しげに見えてくる。

大内宿

 喜多方を過ぎ会津若松へ。会津若松はさらに暑い。頭がボーっとしてくる。ちょうどお昼。「冷やしうどん」ののぼりに誘われてうどん屋に入る。冷やし五目うどんを頼んだのだが、肝心のうどんがあんまり冷えていなくてガッカリ。
 近くのコンビニでアイスをかじりながら宿の予約。一発OK!即出発。南に進路を取る。会津若松を出ると心持ち肌に感じる風が涼しくなった。
 会津若松の南、芦ノ牧温泉に立ち寄ってみるが、ただの温泉街。昼に歩いてもおもしろくない。さらに南下して大内宿へ。
 大内宿はただの田舎の一集落といえないこともないが、昔の民家がこれだけ町並みごと保存されているところはなかなか無い。しかもちゃんとした生活の場なのである。
 未舗装の広い道路を挟み古い民家が立ち並んでいる。ほとんどの家がみやげ物屋やそば屋をやっている。ぶらぶらと冷やかしながら歩くのがけっこう楽しい。
 どん詰まりの山の上に小さな祠がある。石段を何段か登ると突然空気が涼しくなった。祠の前にあるベンチでセミの声を聞きながら一時間ほど涼んでいた。こういう時間ほどゆっくり流れるものだ。
 大内宿をあとに「塔のへつり」にいってみた。大した景観だ。でもそれだけ。
 4時ごろ宿に入る。
 湯野上温泉の民宿「会津野」。建物は茅葺き屋根の古い農家を移築したもので、なかなか趣がある。もちろん温泉付き。周囲を板塀で囲われた露天風呂がちょっとよい。
 夕食はイワナの塩焼き、刺身他。なかなかよろしい。とくにイワナの刺身は絶品!その身の弾力の強さにビックリ。
 汗をかき通しの一日でついついビールをたのんでしまったが、ふと壁をみると「イワナの骨酒」の張り紙。あ〜っ、こっちのほうがよかった。

 部屋にはクーラーどころかテレビもない。廊下に並べてあった本棚から本を一冊。浜田広介の童話集。湯飲みで持参の泡盛を飲みながら読み始める。
 広介は山形県高畠町の出身。私の祖父も高畠町の出身で、さらにルーツをたどれば会津にたどり着くという。
 戊辰戦争の折、会津を捨てて高畠に移った者の子孫が、百数十年の後に会津の地で浜田広介の童話を読んでいるというわけだ。
 夜だというのに聞こえるのは息苦しくなるほどの蝉しぐれ。ゆっくり、ゆっくり流れていく時間が心地よい。
部屋の暑さは別にして・・・。

民宿・会津野

 8月2日
 いやはや夜は暑かった。タイマーの壊れた扇風機を一晩中まわしっぱなしにしていたが、なかなか寝付けなかった。
 朝風呂で汗を流し、それから朝食。のんびりと準備をし、出発したのが午前9時。早くもセミの声が辺りの林に響きわたる。
 天気はもちろん快晴。じっとしていると汗がにじむが、走り出したらそれほど暑くはなかった。
 国道121号線を南下して下郷、田島。栃木、日光へと続く国道の県境手前で西に折れ、檜枝岐方面へ。
 このあたりは東北というよりは関東圏といった感じ。車のナンバーも福島以外はほとんど北関東ナンバーだ。
 山にはいるにつれ気温が下がってくる。肌をなでる空気が気持ちいい。しかし行く先には暴れだしそうな入道雲がまちうけている。
 国道から折れて立ち寄った木賊温泉でとうとう雨が降り出した。ちょうど共同浴場の前。路肩にバイクを止め、バックとヘルメットを抱えてかけ込む。
 ちょっとだけレトロで、小ぎれいな浴場、と思っていたら、一緒に入っていた人が「なんでこんなに汚いんだ」。うーん、感覚のちがいって恐ろしい。
 窓の外の杉林にけむったように雨がふる。軒先を打つ雨だれの音を聞きながらのんびりと温泉を楽しむ。ああ〜、ゴクラクじゃー。

 このまま雨をやり過ごすつもりだったが、やみそうもないのでカッパを着て走り出す。
ふたたび国道に出てしばらく走るとT字路にぶつかる。進路は右手。その先はるか只見方面に厚い雲。どうせ濡れるならと、反対方向の檜枝岐村に寄り道することにする。こっち方向は切れ切れの雲が雨をところどころにおとし、そのあいまに太陽が光をふらしている。森が深い。濡れた広葉樹とアスファルトがきらきらと光を放っている。
 檜枝岐村では昼食に「裁ちソバ」を食べた。「はっと」付き。ソバはつなぎ無し、細めで歯ごたえの強い、素朴な味わい。つなぎを一切入れないため、生地を折って切ることができず、布を裁つように切るので「裁ちソバ」というそうな。
 「はっと」は蕎麦掻きですな。モチのように粘りが強く、ごまだれがからめてある。これもなかなか美味。家でまねをして作ってみたが、あの強い粘りが出なかった。秘訣はなんだろうか?

川霧に覆われた只見川

 昼食を終え北上。只見町へ向かう国道は生活道路といった感じで、原付から軽トラ、営業車にトラクター、散歩のおばあさん。ありとあらゆるものが路上にいて、けっこう神経を使うし、道幅が狭く路面も悪いのでとにかく疲れる。
 道路の善し悪しって旅の楽しさにけっこう影響するものだと感じた。
 只見町は雨。只見ダム脇の休憩所で雨がやむのを待ったが、やむ気配がない。ガソリン・スタンドのおばちゃんの話では、昨日も強くふったらしい。同じ会津といえど、こうも広いと天候もぜんぜん違う。
 雨がやみそうもないので、雨中を東に向けて走り出す。今日の泊まりは柳津温泉。
 国道252は新潟、長岡方面にぬける幹線道路で、大型車両などの通行が多く、走っておもしろい道ではない。雨にふられるとなおさらだ。
 道に沿って流れている只見川(と言うよりも、道が川に沿って造られているのだが)が川霧に覆いつくされていてとても幻想的に見える。こればっかりは雨に感謝。
 途中、沼沢湖に立ち寄るが、よくありがちな観光スポット、どーってことない。美術館があって天野喜孝の作品展をやっていたが、ずぶぬれの雨ガッパ姿で入るのは気が引けたのでやめにした。
 午後4時過ぎに柳津温泉に到着。泊まりは町営の宿「つきみが丘町民センター」。空調もきいていて部屋もきれい。ただ夕食が質素。一泊6千円台じゃあこんなものか。
 8月3日
 九時ちょっと前出発。あちこちに雲が立っているが暑くなりそうだ。
 まず猪苗代方面からゴールドラインに乗り裏磐梯へ向かう。
 前に来たときは工事中で走れなかった道だ。天気のせいもあるだろうが、なかなか気持ちのいい道だ。雨上がりの濡れた路面に陽光が降り注ぐ。道のはるか先には入道雲が待っている。
 裏磐梯到着。檜原湖をぐるっと一回りして喜多方へ向かう。
 喜多方、やはり暑い。お気に入りのラーメン屋に入ろうとしたがお祭りでにぎわい、なかなかバイクを停められる所がない。やっと広いところを見つけて停めたら、そこはラーメン屋の前。バイクだけおいて別のラーメン屋に食べにいくのもなんなのでその店に入ったが、味は・・・まあ、不味くはないが、どこにでもあるような味でちょっとガッカリ。

左、喜多方から大峠を望む。右、大峠トンネルを出ると・・・。

 帰路、喜多方を出て大峠トンネルぬけるとなんと土砂降りの雨。トンネル出口付近でやむのを待つが、なかなかやまない。面倒だがカッパを着て走り出す。案の定、山を少し下れば雨はふっていなかった。すぐにまたカッパを脱いで走る。しかしそこら中で入道雲が雨をふらせようと待ちかまえている。
 雨雲に近づかぬよう上手く道を選んで進むが、朝日町辺りでとうとうやられる。かまわずそのまま突っ切る。それもまた楽しい(ほんのちょっとね)。
 強い雨だったがほんの一時だった。「一週間晴れっぱなし」の予報はどこにいったんだ。
 空のあちこちに雨雲。山形の空気は出発前と違って、いつの間にか涼しくなっていた。

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